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■ HIRO COLUMN 文: 広河 隆一
2002 年を振り返って
 
Posted: 12/25/2002

 【東京 25 日】

 これが 2002 年最後のコラムになります。

 今年のまとめといくつかのお知らせ

 私のホームページ、HIROPRESS.net の継続が難しくなってきました。9 月以降更新の間隔が長くなっていて、どうしたんだと思っている人も多いと思います。私の怠慢もありますが、ボランティアでこのホームページを制作、運営していただいた人が、急に忙しくなり、割ける時間がなくなってきたことが原因です。

 そこで新たにボランティアの公募をすることになりました。応募していただく方は、恐れ入りますが、電子メールに自己紹介、応募の理由、お住まい、連絡先をお書きの上、mail@hiropress.net にお送りください。自己紹介には、過去に制作、運営に関わったホームページと、ご自分の役割などもお書き添えください。参考のため、所有されている機材 (パソコン、モニタ、スキャナなど) やソフトも、お知らせいただければ幸いです。

 今年、私はフォトジャーナリストとしての仕事に力を入れました。昨年 11 月、12 月とアフガニスタンの取材、今年の 1 月から 6 月まで毎月パレスチナ問題を追いました。8 月にチェルノブイリ、9 月はレバノン、11 月にアフガニスタンに行きました。ほとんどの仕事は週刊金曜日に掲載され、それ以外には NHK BS のニュース番組を 4 本作りました。

 5 月に岩波新書『パレスチナ新版』を出版し、これは 10 月に早稲田大学ジャーナリズム大賞をいただくことになりました。そして『写真記録パレスチナ』1、2 巻を日本図書センターから出版することもできました。高価な本 (2 巻で 18,000 円) ながら売れ行きは順調とのことです。引き続き、私のホームページのメール配信登録者 (登録無料) には割引価格で販売しています。

 また 11 月に新宿コニカプラザで写真展「激動のパレスチナ」を開催しました。10 日間で 11,000 人以上が来てくださいました。

 私が代表世話人として 6 月に立ち上げた日本ビジュアル・ジャーナリスト協会 (JVJA) も、今年のトピックです。7 月に報告会「5 人のジャーナリストの見たパレスチナ」、9 月に「私の心に刻んだ写真」展、12 月に報告会「写真と映像でとらえた「反テロ戦争」の現場」を開催し、報告会は 2 回とも、立ち見が出るほど大盛況でした。来てくれたのは、ほとんど若い人々です。また 8 月にはメディアのジェニン虐殺報道に異議を唱える意見書を出しました。

 この会がどこまで力をつけることができるか、これからが正念場です。でも現在の世界の恐ろしい流れに少しでも抵抗するには、まだまだ力が弱すぎます。

 早稲田の賞をいただいたおかげで、来年は早稲田大学で春と秋にメディアの講義をすることになり、さらに秋には大学構内で写真展をします。明治大学では 4 月と 10 月に授業をするつもりです。

 いよいよ取材費がやりくりできなくなりました。昨年まで使っていた機材やレンズを放出します。中古カメラ店に持っていって買い取ってくれるという金額で提供します。希望者が 2 人以上いたらオークションです。希望者はメールで知らせてください。

 提供するのは次の機材です。

 (1) ソニー デジタルビデオカメラ VX1000
 (2) ソニー デジタルビデオカメラ DCR-TRV30
 (3) ソニー HI8 ビデオカメラ CCDVX1
 (4) ソニー HI8 ビデオカメラ SC7
 (5) キャノン デジタルビデオカメラ XV1
 (6) キャノン レンズ EF35-350 ミリ F3.5-5.6
 (7) キャノン レンズ 20-35 ミリ F2.8
 (8) キャノン レンズ 28-200 ミリ F3.5-5.6
 (9) ケンコー テレプラス キャノン用 2X
 (10) キャノン エクステンダー EF2X

 年末は大掃除の連続でした。ボランティアの人に手伝ってもらい、5 年ぶりの資料整理をしました。まだ途中です。ボランティアがもっと欲しいので、希望者はご連絡ください。

 NHK 日本賞

 NHK が世界の優れた教育番組に与える日本賞が、イスラエルの番組「時について考える」(カルーナフィルム) に与えられました。いい番組なら問題ないでしょうが、この番組にはパレスチナ人は、テロの恐怖をもたらすものとしてしか姿をあらわさないのです。さらに「イスラエルにとっての時の意味を問いかける」とホームページにありますが、この番組ではイスラエル国民とはユダヤ人のことであり、人口の 5 分の 1 を占めるパレスチナ・アラブ人も姿をあらわしません。

 NHK のキャスターは、これは政治的な作品ではないし、政治的な理由での受賞ではないと言っていましたが、現在の中東情勢を見ると、パレスチナ人が存在しない作品自体がきわめて政治的なものなのです。

 私たちの視聴料がイスラエルに行っているということなのでしょうか。また審査委員がジョージ・ルーカス財団ということも、今回の審査に影響を与えたのでしょうか。

 朝日は恐れよ

 12 月 21 日の朝日新聞社説のタイトルが「イラク政府は恐れよ」でした。アメリカの新聞ではありません。日本の新聞の社説のタイトルなのです。後半に「説得力のある大義を欠いた戦争」をすべきではないというアメリカへの進言もありますが、このタイトルは、これ以上アメリカや安保理の満足しない報告書を出すと、イラクへの爆撃がはじまるぞというわけです。簡単に言うと、誠意をもって報告しないと爆弾の雨が降るぞというのです。これはアメリカの爆撃を肯定するための地盤作り以外の何ものでもありません。

 戦争とはいうものの、今、準備されているのは、湾岸戦争と違い、一方的にアメリカが爆弾を落とすだけの戦争です。被害者はアフガンの例でも明らかなように、非武装の市民、特に女性と子どもでしょう。

 社説の論拠は国連査察団が「イラクの提出した申告書には矛盾がある」という一次評価を国連安保理に提出したことと、パウエル米国務長官が「申告書には重大な違反があり、我々が平和的解決に向かうことはまったく不可能だ」と表明したことにあります。朝日独自の調査があったわけではありません。しかし朝日は「イラクは恐れよ」というタイトルをつけました。なんという傲慢なタイトルでしょう。恐れなくてはならないのは、爆撃を準備するアメリカに対する批判を忘れ、とんでもない論調をまかり通らせながら、アメリカに追随する日本のメディアです。

 朝日新聞は爆撃の被害者の子どもに対して、悪いのはフセインだからフセインをうらめとでも言うつもりでしょうか。しかし 1 人の子どもの命を奪う爆弾の投下を正当化する一切の論理は存在しません。アフガン空爆を正当化した朝日新聞は、今、イラクへの爆撃肯定への道を歩み出してしまいました。

 こうしたときにフォトジャーナリストに何ができるか

 このところ、第 2 次大戦で日本のフォトジャーナリスト (報道写真家) たちが何をしたのかという関連の本を読んでいます。ひどいものです。戦争をあおるお先棒を担いでいったのです。ほとんど 1 人の例外もなしにです。作家には抵抗した人もいました。しかし写真の分野では、そうした人はいませんでした。なぜでしょうか。

 他国の戦争を批判するのは易しいのですが、自国が戦争への道を歩み始めたときに、それを食い止めることは非常に困難です。アメリカのメディアはその恐ろしい泥沼にどっぷりとつかっています。イージス艦を派遣した日本は、その道を辿り始めています。朝日の社説は、非常に重要な時期に、アメリカによる戦争への支持を表明したといえます。

 こうした流れに警戒をする真のジャーナリストの結集が必要です。そしてジャーナリストがこの困難なときに志を忘れないためには、ひとりひとりの心の中で、強いアイデンティティ意識の形成が必要なのです。

 私は今、じりじりする焦りの気持ちをどうにも鎮めようがありません。こうしたときに 12 月 21 日付朝日新聞「私の視点」欄に、芝生瑞和氏の「米の視点に惑わされるな」が掲載されました。彼はジョージ・オーウェルの未来小説『1984 年』と現在進行中の恐ろしい事態を重ねてみせます。これは見事な分析で、是非とも一読を勧めます。

 さて「よいお年を」という言葉を言うべきなのでしょうね。でも、はっきりしているのは、来年は今年よりも、はるかに大勢の人が殺されるだろう、ということです。それでも希望の言葉として、よいお年を、心豊な新年を迎えられるように、お祈りします。

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