世界中で毎日たくさんの事象が起こっている。その大半は無視して忘れてしまってかまわない。しかし、中にはどうしても無視できないものがある。
家を追われ町を追われた人々が、持てるだけの荷物を持って、標高 2,600
メートルの雪の峠を徒歩で越える。この光景は無視できない。なぜこのようなことになったのか、何が彼らを追い立てているのか、見る者は考えなければならない。
フォト・ジャーナリストの仕事は指さすことだ。無視してはならない事象を指さして、これを見よと言うことだ。峠を越える人々、射殺された少女の死体、われわれが普段見ているどんな車よりも大きくて重くて威圧的な戦車、その戦車に投石で応じる人々。広河隆一はわれわれが見るべきものをしっかりと指さしている。