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■ HIRO COLUMN EXTRA
フォトジャーナリスト講座
文:広河 隆一
生死を見つめた子どもたちのまなざし
 
Posted: 1/24/2002

 チェルノブイリ子ども基金が行っている夏の催しに、「甲状腺の手術をした子どもたちの保養」がある。ベラルーシとウクライナで同基金が援助支援しているサナトリウムに、子どもたちを招き、病気のことを忘れて、せいいっぱい抵抗力をつけてもらう企画である。

 このとき日本人ボランティアが現地に行き、「日本週間」と題して、日本文化を紹介したり、教室を開いたりする。

 1999 年と 2000 年に、私は「ジャーナリスト講座」を担当した。

 12 歳から 16 歳までの 30 人ほどの子どもたちがこの教室に参加し、5 日間の授業を受けた。

 1999 年は写真を教え、2000 年はビデオを教えた。

 写真教室では、名画をスライドで見せ、画家たちが光をどのように描いたかいっしょに勉強したり、人物に光を当てて表情を見たり、有名な報道写真を見て解説したりした。そして午後は自由に写真を撮らせ (800 円のキティちゃんカメラを 30 台買って持っていった)、4 日目にそれを現像し、5 日目に展示したのである。

 子どもたちのほとんどははじめてカメラを持ったのだが、彼らの作品の見事さに私の方がうなってしまった。

 この子どもたちは全員が、のどの手術をしている。チェルノブイリ事故のとき放射性ヨウ素を吸収してしまい、事故から何年もたった後、ガンをはじめ、さまざまな甲状腺異常が起こり、甲状腺を切除したのだ。

 手術を言い渡されたときに、死ぬのではないかと思い詰めた子も多い。ガンが転移している子も半数近くいる。

 子どもたちの写真展では、生死を見つめた子どもが世界へ向ける真剣なまなざしが光を放っていたのだ。フィルムも写真も子どもたちがもって帰ったので、残念ながらお見せすることができない。

 2000 年にはビデオの授業で、チームを作り、カメラ、レポーター、ディレクター、キャスターを決めさせ、子どもたちでその日の取材企画会議を行い、午後は取材し、夜 8 時からニュースの時間にした。これもはじめてビデオカメラを持った子どもたちが、初日から見事な番組を作った。

 ところで各授業で、私は“ジャーナリストの仕事”を次のように子どもたちに話した。

「すべての人は、幸福に生きる権利を持っています。そして自分たちを幸福にしてくれることを願って、政府を選びます。しかしどの政府も人々の幸福を願うわけではありません。お金のために人々を犠牲にする政府もあります。人々に知らせては都合の悪いことは隠そうとします。

 あなた方が病気になったのは、あなた方の健康や幸せをまず第一に考えなかった政府や、事故の被害を隠そうとした人々に責任があります。

 ところで人々は、知らなければならないことを、いつも知らされるわけではありません。そこで人々の“知る権利”を行使するのがジャーナリストなのです。だからジャーナリストは相手が大統領でも軍隊でも、対等にインタビューしたり、調査することができるのです。ジャーナリストは人々の“幸福になる権利”と、そのための“知る権利”に基づいて仕事をし、事実を人々に知らせる義務を負うのです。

 だからこうした人々の幸福を願う気持ちに基づかないジャーナリストは、魂を売ってしまったジャーナリストで、本当のジャーナリストではありません。

 みなさんが将来ジャーナリストになりたいと思うなら、まず人々にとって何が幸せか考える人になってください」

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