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■ HIRO COLUMN 文: 広河 隆一
アフガニスタン 空爆の犠牲者
 
Posted: 12/12/2002

 【東京 12 日】

 アフガン取材の報告の 2 回目です。まとめたものは週刊金曜日に発表するつもりです。

 今回の取材の準備をするときに、まず参考にした資料は『アメリカはアフガニスタンで何人の人々を殺したのか!?』(アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局) です。ここで私はアメリカのニューハンプシャー大学のマーク・ヘロルド教授の研究を知りました。彼はアメリカのアフガン空爆による死者の数を、世界のマスメディアの報告から整理し、割り出しました。そして 3,000 人から 3,400 人が殺されたと結論づけました。

 彼はインターネットで、その元になるデータを発信しています。私はそれを手にいれ、地域別に整理し、取材計画を立てました。

 カブールへは今、パキスタンの首都イスラマバードから 1 週間に 2 回、パキスタン航空が飛んでいます。たしか片道 200 ドルくらいです。ここまでは何の問題もありません。

 問題はその先です。カブール国と地方国があると思えるほど、カブールは特殊な存在です。ここは安全、地方は危険。ここは何でもあるが地方には何もない。そしてカブールから地方に行く道、特にカンダハルへの道はずたずたになっています。道を走るより、わきの平原を走る方が早かったりします。横転しているトラックも見ました。そして日が暮れると、どの道も非常に危険になります。地雷の撤去はまだ遅々として進みません。

 君臨しているのはアメリカです。あるとき私は米軍の特殊工作隊がアルカイダ容疑者を逮捕しているところに出会いました。車を止めて撮影しようとしたら、ガイドが「やめてくれ、俺が逮捕される!」と叫んで、車を加速させました。彼はカブール市内でアメリカ兵を撮影したという罪で、逮捕され、拘留されています。空爆の跡地でも、被害者達はアメリカを恐れて、批判しません。数十人が殺されたと記録されている、ある村を撮影しようとしたら、アメリカの命令で村を撮影させるわけには行かない、と警備兵に拒否されました。

 私は、アメリカが傀儡政権を維持しながらアフガニスタンを占領しているのと、どう違うのだろうか、という思いをもちました。それでアフガン人の青年に尋ねてみました。

 「アメリカはアフガンになぜ介入したと思う?」

 「アメリカは中央アジアに支配権を確立したいからだ」と 1 人の青年が言いました。

 「そう思っているのは君のほかに、どれくらいいるのだろう」と私は聞きました。

 「ほとんどだと思うよ。軍関係や政府関係以外はね」と彼は答えました。

 こうした考えは、日本のメディアから私たちが受け取るニュースとは、かなりかけ離れています。

 2002 年 10 月 7 日の朝日新聞「検証アフガン攻撃 1 年」には武石英史郎記者のすぐれたレポートがあります。しかし同じ紙面に「アフガン攻撃はテロ組織根絶の長い道程の第一幕だった」という言葉で始まる立野純二記者の記事があります。

 彼の書いているのはアメリカの言い分なのに、それに気がつかないのでしょうか。アフガン攻撃を正当化するのはアメリカですが、朝日新聞が同じように正当化していいのでしょうか。

カンダハルの東にあるタルナクの宗教学校とモスクと付近の民家が破壊された。死者の総数は不明。不発弾撤去や地雷撤去がまだ済んでいないため、今も死体は瓦礫の下にある。近くの軍空港で 4 人のカナダ兵も米軍の爆撃で殺された

 私は予定した空爆地の 3 分の 1 も取材できませんでした。それでも約 20 の爆心地を訪れることは出来ました。

 そこで見たものは、ほとんど報道されなかった、凄まじい爆撃の跡でした。

 ヘロルド教授のデータのうち、実際に現地に立つと、爆撃がなかったことがわかった所もありました。しかし彼の集計にはない場所で、空爆の被害を見たこともあります。私の感想では、ヘロルド教授の出した犠牲者 3,000 人から 3,400 人という数字は、確かなものでしょう。もしかしたら、はるかにその数字を超えるかもしれません。

 そして付け加えておかなければならないのは、教授のこの数字は、爆撃直後に死んだ民間人だけを数えたものであり、病院で死んだ人、空爆の影響で医薬品や救援が届かなかったために死んだ人は含まれていません。ノーム・チョムスキーのいう「静かなジェノサイド」の犠牲者です。

 その人々を加えると、犠牲者は数倍か数十倍になるでしょう。

 イギリスのガーディアン紙 (2 月 12 日) は「空爆はまだ続き、アフガニスタン人は殺され続けている。しかし誰も数えていない」という記事を掲載しました。しかしこうしたことに警告するメディアは、ほとんどありません。

 「欧米や日本のマスコミが、半ば意図的に垂れ流す首都カブールの「活気」「明るさ」とは裏腹に、それ以外のアフガンのほとんどど全域が、地元部族の権力抗争と群雄割拠で収拾がつかなくなっている」(前出パンフレット)。

 先日、東京ウィメンズプラザ・ホールで日本ビジュアル・ジャーナリスト協会が主催した「写真と映像でとらえた「反テロ戦争」の現場」の催しを、私は次のような言葉で締めくくりました。

 世界が「正義」という名の暴力にさらされている。これを見抜けない者、その被害者、犠牲者を伝えない者を、ジャーナリストと呼ぶべきではない。その人々は加担しているだけだ。

アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名運動
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/

[翻訳資料集] アメリカはアフガニスタンで何人の人々を殺したのか!?
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Afghan/pamphlet_afghan_victims.htm

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