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■ HIRO COLUMN 文:広河 隆一
ジェニン戦争
 
Posted: 4/11/2002

 【エルサレム 10 日】

 明日、アメリカのパウエル国務長官がこちらに来ます。しかし、それで何かが変わるとは思いません。

 シャロンはせいぜい「ベツレヘムからの撤退」と「ラマラのアラファトの拘禁解除」をおみやげにもたせて、パウエルをアメリカに帰せばいいと思っているでしょう。どうせベツレヘムなど、すぐまた再占領できるし、アラファトもすぐ拘束できると、シャロンは思っています。

 アメリカも馬鹿にされたものです。

 私がここに来たときは、ベツレヘム他あらゆる町が「軍事閉鎖地区」下におかれ、ジャーナリストも近付くだけで撃たれているという状況で、それは今も続いています。

 到着した日は催涙ガスに見舞われ、翌日はベツレヘム、その次の日もベツレヘム、そして、ラマラ、ラマラ、ヘブロンと回ってきました。

 どこでも撮影は困難を極めています。

 ベツレヘムでは、それまでジャーナリストが誰も行けなかった生誕教会の前の広場に出て撮影していたら、イスラエル兵に拘束されました。

 イスラエル兵の目を盗んで入ったラマラでは、宿泊したホテルにジャーナリストが 20 人ほどいましたが、窓から外を見ただけで、撃たれるという状況でした。

 この間に、ジェニンは最悪のことになっています。200 人以上の死者、未確認情報では、1,000 人近い死者が出ているという報告もあります。ほとんど民間人で、子どもも多くいるということです。死体は運び出すこともできず、ほとんど腐乱し始めています。今日、イスラエル軍は、これが世界に知られると大変だからと、死体を運び出して破壊跡を清掃し始めているといいます。軍関係者は、ジェニンで何が行われたか外部に知れたら、世界が許さないだろうという発言もしています。

 ジェニンはシャロンの戦争の最大の悲劇の象徴になり、やがて彼は戦争犯罪で裁かれるでしょう。こうしたことをやってのけた首相を選んだイスラエル国民、最後まで連立を割らなかった労働党、すべて、このジェニンの悲劇の重さを、これから数十年間、負い続けることになるでしょう。

 そしてイスラエルは、ジェニンの名をかぶせた自爆テロの嵐に、これから見舞われることと思います。パウエルが来ている間に、それは始まるでしょう。そしてそれを理由に、シャロンは第 2、第 3 のジェニンを作るでしょう。「テロに対する正義の戦争」を掲げたアメリカは、シャロンを説得できる言葉をもちません。

 しかし今、シャロンの敗退は確実に準備されているように思います。昨日、ジェニンでは、イスラエル兵 13 人がパレスチナ抵抗勢力に殺されました。今日はバスの爆破で 8 人が死んでいます。

 ジェニンはイスラエルにとっての「スターリングラード」の始まりなのです。

 私は明日、ジェニンに向かいます。

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